中国経済の雲行きが怪しい、というニュースが新聞紙上を賑わしている。中国銀行は8月21日に2カ月ぶりの1年物ローンプライムレートの0.1%利下げに踏み切ったとの報道もあった。不動産業界の経営不調も不安要因だ。現地で生活していても実感はないのだが都市部若年層の失業率が20%にも達するという話もある。躺平(寝そべり族)という語は聞いたことがあるだろうか。Rat Raceのように始終競争環境に晒されるより、ゆるゆるいこうよ、という一定の層が少なからず現れ始めている、ということか。
景気は人民の気分次第だ。そこで税務総局は景気下支えの税務対策として、小規模企業や個人経営者を主たる対象とした民営経済発展促進のための税務サービス向上のためのアメ政策である“春風行動”の第二弾通達を公布した 。大企業には関係しない項目が多いもののの、抜粋して一部内容をご紹介する。
通達は5分類全28項目からなる。
その一は“政策実施の強化”であり、小規模企業及び個人事業主への壮大な税優遇政策のリストとマニュアルの作成、研究開発費加速償却を享受するための認定の加速化、小規模納税者の増値税の減免、所得税の優遇における自主申告の奨励、をあげている。
その二には、経理規定/個人事業主経営者身分証明など一部の証明資料の提出簡素化/省略/非要求、発票の電子化促進、電子申告による納税事務の軽減、税務登記地の省を跨ぐ移動手続の迅速化、税務信用等級の金融機関との共有による有利な融資条件の享受、など“税務手続の便宜向上”があげられている。
登記場所の移転を考えている企業にとっては今が絶好のタイミングではないだろうか。
その三は、民営企業向け相談機能の充実など“訴えに耳を傾ける”ことの改善だが、具体策には乏しい。
その四として、国外投資手続の簡素化、増値税輸出還付手続の簡略化/還付の迅速化、海外投資のアドバイザリー機能の拡充/不明点の解消、国別税務事例の公布による民営企業の“走出去”(海外進出)の後押し、相互協議など国際税務問題解決手段の拡充を通じた税務争議の解決/国際経営の税務安定性の向上、“一帯一路”参加国との税務協調、などの国際税務の拡充があげられる。
中国国家税務総局編“日本投資ガイドブック”の出来上がりに期待したい。
最後に所轄税務当局に対して、年度目標達成のための税金先取り(或いは達成済みのための税金翌年払い要請)の禁止、税務の遵法処理を促すための納税処理の自主改善に対する行政処罰の免除(違反が軽微な14項目に限る)、とある。従来からの処理が税務上正しいものではないことを知りながら、ある時期から処理を変更すれば過去何年にも遡って修正を求められるのではないか、との懸念からなかなか動けず、結果として間違った処理を続けてしまう、という問題は以前からある。例えば日本払い賞与にかかる中国個人所得税の未納問題など。この規定では、隠し銀行口座がある、帳簿や帳票が保管されていない、仕入発票に不備がある、源泉納税義務を怠っている、外国企業の恒久的施設(PE)の登録をしていない、などの14項目に限られるわけであるが、それ以外の項目における修正申告のタイミングとしても使えるのではないかと思う。
なお、この種の“手を出すと藪蛇”になりそうな事項は、“キリのいいところ(新年度など)から”(過去は考えない)、“静かに騒がず”(藪蛇に注意)行うに限る。
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